卯野コチコチです。
AmazonのKindle月替わりセールで好きな漫画家さんの短篇集が64%OFFになってたので購入。今日はその感想をさらっと。
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鬼頭莫宏短編「殻都市の夢」
702円→250円。
「なるたる」とか「ぼくらの」の人です。
舞台とテーマ
設定は近未来。コップを重ねるように都市形成するという「外殻都市」の中で管理官2人が目にする、7つのいびつで不器用な愛のかたち。全7話、「エロティクスF」にて2003〜2005年にわたって掲載された。
第1話 誕生日の棺
第2話 3年間の神
第3話 生死者の聲
第4話 媚薬水の味
第5話 座敷童の印
第6話 造物主の檻
第7話 渉猟子の愛
感想:見る人を選ぶけど乾いたSF・せつない話好きにはたまらない
鬼頭莫宏好き、SF好きには安心してオススメできる作品。攻殻機動隊の世界観にちょっと似てますかね。
んが、Amazonレビューにもあるとおり、鬼頭作品を知らない人は拒否反応起こす人も半々だろうなと思いました。
掲載誌名と少女、という点でお察しください…。
ただし当該描写はいかにもとってつけたようなオマケ程度だと私は感じました。
冒頭でも書いたとおり、この7つのテーマに共通しているのは人間がもつ愛です。それが不格好に殻を継ぎ足しながら発展していく世界とツールの中で取り遺され、あるいはそれらによって屈折し、いびつなかたちで出力される。
特に好きだった話3選
どれも好きですけどねー
「第2話 3年間の神」
【あらすじ】
感染症で余命3年の男が地下街で餓死寸前の女の子を拾う。彼は自身の病気を彼女にうつす代わりに、3年間の命と蔵書をはじめとした遺産のすべてを彼女に託す。
→鬼頭作品でよくみられる、大人が子どもを抱擁するようでいて、大人が子どもに抱擁されている構成です。神様はどっち。
「第3話 生死者の聲」
【あらすじ】
戦場から送還された丙種遺体が脱走。管理官2人が彼を回収に走る。丙種遺体は死んでも肉体が腐らない限り生き続けるという特質をもっている。
丙種遺体は妻のもとにある言葉を伝えるために脱走したのだった。崩れゆく肉体を装甲で隠し、妻と対面した男はーーー。
→レビューでもこの作品が一番評価が高いようですね。一般にもおすすめしやすいです。
「第6話 造物主の檻」
【あらすじ】
外殻都市で起こる少女の誘拐事件。ある男が、自分がその犯人だと自首してくる。自身が開発したゲーム同様、少女を閉じ込めてただ眺めていたのだが、やがてゲームでは起こりえなかったある「バグ」が発生しーーー。
→男の憧憬的愛と生身の少女たちの残酷さのコントラストがいいです。
ラストの「あんなのただの退屈しのぎのゲームでしょ」ってセリフが、男の横っつらをはたいているようだ。
サブタイトル英語の意味は
サブタイトルになっている英語「Hallucination from the womb」は
直訳すると「子宮内からの幻覚」。
舞台となる外殻都市を子宮にたとえて、幻覚はそこでおこる不思議な出来事を指していると思われます。
が、ラストの物語「渉猟子」でのセリフともリンクして聴こえるんだよね。
「古い記憶は本当になくなっていくのかしらね」
「もしそれが本当に必要なものなら忘れないだろ」
古い記憶も、都市の栄華もそこで暮らした人々も、継ぎ足される外殻の奥に奥に押し込められて忘れ去られていく。
でも時たま思い出したようにそれらが形を変えて私たちの今いる「外殻」へあらわれる。
それはきっと私たちの奥底にあり続ける、普遍のものたちだからなのでしょう。
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