2015年2月14日土曜日

Kindle2月の月替りセールで買った銃夢2冊と気になってる津村記久子1冊

卯野です。Kindleの話にばっかりなってるな。
Kindle2月の月替りセールで買っちゃった本2冊と、買おうかな〜と迷ってる1冊をご紹介します。



買った本「銃夢Last Order」1,2巻




今月は「銃夢Last Order」が0円セールになっているらしく飛びついてしまった。

銃夢 - Wikipedia

銃夢 LastOrder - Wikipedia


「機甲術(パンツァークンスト)」という武術を使う機械の身体の少女、「ガリィ」が活躍する近未来SF。実は銃夢のラストは構想を残したままの突然の終わり方だったらしく、その残りを引き継ぐ形で再開したのがこの「銃夢 LastOrder」とのこと。

主人公のガリィが明るくまっすぐで、でもめちゃくちゃ強くてカッコいい。パンツァークンストの戦闘シーンも描き込みが細いのに見やすく、ワクワクしながら1ページごとにめくったのを覚えています。

それからこのマンガは根底に「ヒトとは、そしてその尊厳とは」というテーマも盛り込んでいます。攻殻機動隊やマトリックスと同様ヒトをヒトたらしめるもの、自分の信じている世界は本物か?という哲学的問いがある。

それはラスト、黒幕のノヴァ教授との戦いではっきりと表されています。
「自分は人間だ」として、鉄クズの身体のガリィを見下していたノヴァ教授が知らないうちに「脳チップ化」(機械の身体化)されていて「ガーーン!」て鼻ミズ垂らしちゃうの。
自分の脳みそがチップじゃないって、誰が証明できる?




ちな2巻は99円。買いました。
以下続刊は648円、12巻まで出ています。買うかは上記2巻読んでから。
坂道のアポロン3巻以降も読みたいのです。



気になる本−津村記久子「君は永遠にそいつらより若い」







きまやのきまま屋






はてな「きまやのきまま屋」さんの選書眼が私にとってツボで、そのきまやさんがご紹介されていた津村記久子さん。

読んだことがないのでぜひ読んでみたいです。うーん買っちゃうかも。本は腐らないし!


その他のKindle2月の月替りセールはこちらから。
チェックしてみてくださいませ。

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要約「ハウツーで上手くなれると思うな!読め!」−筒井康隆「創作の極意と 掟」読んだ

卯野です。久しぶりに筒井康隆御大の本を楽しんだのでログ。



筒井康隆「創作の極意と掟」


小説創作をしたい人のために御大自らの創作作法と参考図書を惜しみなく紹介しているこの本。

創作のためのハウツーを得たくて購入した人は肩透かしをくうでしょう。なぜなら8、9割が実利的なテクニックよりも、そのテーマに関連した作品の紹介だから。

ただし紹介されている作品のジャンルは新旧純文学ラノベ問わず網羅されており、しかも御大の分析眼が微に入り細に入っている。
東浩紀と涼宮ハルヒシリーズに感化されて自身もラノベに挑戦したっつうから節操のないジ、いや大御所なのに探究心を失わない文筆家の鑑ですね。

ちなみにこれね、ビアンカ・オ−バースタディという作品。




Amazonレビューの中には「ハウツーというより推薦図書紹介だなあ」という声もある。恥ずかしい。正直このタイトルといい中身といい「ハウツー読んだだけで創作ができると思うなよ!」と我が魂胆を御大に見透かされているようで恥ずかしい。

内容は「凄味」からはじまり「色気」「文体」「時制」など、細かいテーマに分かれてポンポン書いてくれているので読みやすい。っていうか時制のあたりなどは「小生正直どっちでもいいのである〜」みたいにさらっと終わってて興味あるテーマとないテーマのテンションがだだ違いなのも楽しい。
あ、「反復」、「遅延」については後半時間を割いてたっぷり分析、解説しています。

私なんかはひとつひとつの構成要素すら意識したことなどなかったので「なるほどそういう要素があるんだな」と勉強になりましたけどね。あと極度の遅延が嫌いだわ自分ってのもわかりました。

文壇界で誰が誰を嫌いな話とかポロリともらしてたり、エッセイとしても十分楽しめるので筒井ファンな方と自分もなんか書いてみようかなーという方にはオススメです。
あとなんでか知らないけど筒井御大の文章読むと句点が極端に少なくなるでござる。


2015年2月11日水曜日

いびつで美しい利他の聖書、そして分岐後の「私」−近藤ようこ「五色の舟」




ミーハー卯野です。読みました。

この物語のジャンルを規定するのは難しい。
家族ドラマととる人もいるだろうし、SF、哲学、社会風俗、戦争の物語とも読める。

つまり私が今まで読んだことのない、どこにもなかった物語で、それでも人間の利他を表す聖書としてずっと後世に残るんだろうと思います。
美しい世界でした。

以下あらすじと感じたことザクっと。
ネタバレありますので楽しみにしたいかたはお控えなすって。



五色の舟は平成26年度文化庁メディア芸術祭漫画部門大賞受賞。
津原泰水という小説家の短篇集「11eleven」収録中の「五色の舟」を漫画化したもの。


あらすじ


舞台は戦時中の山陰。
見世物興行で糊口をしのぐ、身体のどこかに欠損のある血のつながらない家族たち。
未来を予知するという幻獣「くだん」に会うため、一行は山口県の岩国を目指す。
日本の敗戦を予言するくだんを前に、和郎と桜は、そして家族が選択した未来とはーー。



感想


・利他をつらぬく家族が美しい

冒頭で書いたように、読む人のバックボーンでひっかかりどころがそれぞれ違いそうな物語。でもおおもとの根底に流れるのは「家族愛」だと私は感じます。

脱疽(だっそ、壊死)を起こし両足を切断した歌舞伎の女形役者、雪ノ助(お父さん)。
小人症だけれども怪力の昭助。
シャム双生児で片割れを失った少女、桜。
膝の関節が逆についている女性、清子。
そして生まれつき両腕がない少年、和郎。

作品はこの和郎の視点で語られます。



特に好きだったのはクライマックスのこのシーン。

日本に爆弾が落とされ敗戦を予言する「くだん」。その爆弾により真っ先に命を落とすのは和郎と桜だ、とくだんは言います。
雪ノ助と清子は和郎と桜が命を落とさない世界へと導くようくだんに頼みます。
くだんはこう訊ねます。

「本当は分かっているのですがご納得いただくため
その手続きとしてお尋ねします
おふたりをどういった世界にお連れしましょうか」



「和郎が学校に行けるところ!」

清子は躊躇もなくこう即答します。

「ふたりが長く幸せに生きられる世界だ」

雪ノ助が付け加え、最後に口のきけなかった桜が、言葉をふりしぼるようにこう叫びます。

「みっ…」
「みんなも!
ほかのみんなも幸せに!」

ああ、この家族は、血はつながっていなくても、五体満足でなくても、家族としてこんなにも完璧な形をなしている、と感じたシーンでした。


・分岐前に取り残された「私」

くだんの背中にのって和郎と桜はふたりが爆弾で命を落とさない世界、別の分岐へと移行し命をながらえます。

その世界では日本はアメリカの原爆投下によってではなく、上層部への死病蔓延による戦闘不能によって無条件降伏。GHQの司令官は日本軍の爆撃を受けて片腕と片脚を欠いた姿で飛行機のタラップを降りてきます。

この世界では雪ノ助は義肢によってふたたび人気女形役者として再び舞台でその美しい姿を見せます。

清子は膝関節を直し、女優として人気を博します。

昭助はその姿のまま、大漢にも負けない人気プロレスラー「ドワーフ昭助」に。

和郎と桜のふたりは「原爆ドーム」にはならなかった産業会館前を通り、それでも分岐前の五色の襤褸(ぼろ)をかけて舟で暮らしていた家族の時間を思い出します。

和郎は桜に、ふたりだけにしか聴こえないやりかたでこう語りかけます。

「犬飼先生はお父さんに心の置きどころの問題だといっていたよ
だとしたらくだんは僕らを運びきれなかったんだ
運びきる前に死んでしまったんだ」

だって僕らの気持ちは相変わらずあの悲惨な世界にある
やがて爆弾によって終わってしまう短く虚しい世界だったのかもしれないが

こちらの世界のかりそめの自分が死んだら
また心はあそこに戻っていくという
確信めいた想いから僕らは逃れられずにいる


「胡蝶の夢」「マトリックス」「並行世界」の考え方は昔からあるわけですが、和郎と桜にとっては全員が生き延びて離れ離れに活躍するこの世界よりも、たとえ爆弾で死んでしまっても家族5人がさいごまでいっしょにいられる世界のほうが「ほんとうの世界」なわけです。
分岐のどちらを「かりそめ」「ほんとう」とするか、果たしてどちらが幸せなのか。


・くだんの存在感・造形がGOOD

くだんの存在と話している内容がSF的かつ哲学的でした。
内海の航路の分岐の転換器の役割を果たす生物装置なんだってよ。どうやったらそんな発想でてくるんだろうね。


・「五色の襤褸」の意味


ラストまで読みきって改めて表題「五色の舟」にたちもどると、その意味がすごく染みてきます。

五色の襤褸は清子さんが余りものの布をつぎあわせて作った舟に書ける日除けなんだけど、それがかかる舟を和郎は土手から見下ろして「一番幸せな時間だ」という。
五色の襤褸はつぎはぎだらけの、いびつな布たちがより添いあって出来上がったもの。
見目も悪く、規格品ではないものだけれど、色とりどりで、まさしく和郎たち家族の有り様を表しているんだと思います。

分岐後の世界の川に、そこにはもうない五色の舟を思い出す和郎。舟には身体が欠けたままの家族が和郎に視線を向けているところで物語は終わっています。



おわりに

kindle版と紙媒体の両方が出ています。
Kindle版は紙の半額近くなのですが、近藤ようこさんの柔らかい筆致はうーん紙で読んだほうが味わい深いのではないかなーと思います。
でも面白かったので詠まれるならどちらでもおすすめです。
いつか子どもにも読ませたいな。

他のマンガ部門ノミネート作をまったく読んでいないので、「これが一番すばらしい!」とか批評家みたいなことは全然言えません。それでもこういうきっかけでこの作品にあえて良かったなと思っています。

だって読んでから一週間経っても、ラストを思い出してじんわり涙が出てくる。





おまけ

1.余談ですが雪ノ助のモデルとなった女形役者かな?という方を発見しました。
壊死がすすんでも舞台に立って活躍されたそうで、すごい。

澤村田之助 (3代目)

2.原作とマンガではラストが違うそうです。
津原泰水の原作短編も読んでみたいぞ。




2015年2月2日月曜日

Kindle2月セールで鬼頭莫宏短編「殻都市の夢」を買ったよ





卯野コチコチです。
AmazonのKindle月替わりセールで好きな漫画家さんの短篇集が64%OFFになってたので購入。今日はその感想をさらっと。

月替わりセール作品一覧はこちらから。

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鬼頭莫宏短編「殻都市の夢」





702円→250円。
なるたる」とか「ぼくらの」の人です。

舞台とテーマ


設定は近未来。コップを重ねるように都市形成するという「外殻都市」の中で管理官2人が目にする、7つのいびつで不器用な愛のかたち。全7話、「エロティクスF」にて2003〜2005年にわたって掲載された。


第1話 誕生日の棺
第2話 3年間の神
第3話 生死者の聲
第4話 媚薬水の味
第5話 座敷童の印
第6話 造物主の檻
第7話 渉猟子の愛




感想:見る人を選ぶけど乾いたSF・せつない話好きにはたまらない


鬼頭莫宏好き、SF好きには安心してオススメできる作品。攻殻機動隊の世界観にちょっと似てますかね。

んが、Amazonレビューにもあるとおり、鬼頭作品を知らない人は拒否反応起こす人も半々だろうなと思いました。
掲載誌名と少女、という点でお察しください…。

ただし当該描写はいかにもとってつけたようなオマケ程度だと私は感じました。


冒頭でも書いたとおり、この7つのテーマに共通しているのは人間がもつ愛です。それが不格好に殻を継ぎ足しながら発展していく世界とツールの中で取り遺され、あるいはそれらによって屈折し、いびつなかたちで出力される。


特に好きだった話3選


どれも好きですけどねー

「第2話 3年間の神」


【あらすじ】
感染症で余命3年の男が地下街で餓死寸前の女の子を拾う。彼は自身の病気を彼女にうつす代わりに、3年間の命と蔵書をはじめとした遺産のすべてを彼女に託す。

→鬼頭作品でよくみられる、大人が子どもを抱擁するようでいて、大人が子どもに抱擁されている構成です。神様はどっち。



「第3話 生死者の聲」


【あらすじ】
戦場から送還された丙種遺体が脱走。管理官2人が彼を回収に走る。丙種遺体は死んでも肉体が腐らない限り生き続けるという特質をもっている。

丙種遺体は妻のもとにある言葉を伝えるために脱走したのだった。崩れゆく肉体を装甲で隠し、妻と対面した男はーーー。

→レビューでもこの作品が一番評価が高いようですね。一般にもおすすめしやすいです。



「第6話 造物主の檻」



【あらすじ】
外殻都市で起こる少女の誘拐事件。ある男が、自分がその犯人だと自首してくる。自身が開発したゲーム同様、少女を閉じ込めてただ眺めていたのだが、やがてゲームでは起こりえなかったある「バグ」が発生しーーー。

→男の憧憬的愛と生身の少女たちの残酷さのコントラストがいいです。
ラストの「あんなのただの退屈しのぎのゲームでしょ」ってセリフが、男の横っつらをはたいているようだ。



サブタイトル英語の意味は


サブタイトルになっている英語「Hallucination from the womb」は
直訳すると「子宮内からの幻覚」。

舞台となる外殻都市を子宮にたとえて、幻覚はそこでおこる不思議な出来事を指していると思われます。
が、ラストの物語「渉猟子」でのセリフともリンクして聴こえるんだよね。


「古い記憶は本当になくなっていくのかしらね」
「もしそれが本当に必要なものなら忘れないだろ」


古い記憶も、都市の栄華もそこで暮らした人々も、継ぎ足される外殻の奥に奥に押し込められて忘れ去られていく。
でも時たま思い出したようにそれらが形を変えて私たちの今いる「外殻」へあらわれる。
それはきっと私たちの奥底にあり続ける、普遍のものたちだからなのでしょう。






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2015年2月1日日曜日

おっかけ!ゆるゆり?無料webコミック「2LDK」でイイ感じに脱力


あーい。卯野です。

結局きのう一晩で全部読んじゃったよ、2LDK。
こむずかしいことは一切ないからまあ読んでみてくださいよ、
なんてったって無料です。


モアイで読める無料webコミック「2LDK」


2DK/竹内佐千子 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ






以下あらすじと卯野が読んでみてよかったとこをざくっとオススメしますね。




あらすじ

調理関係の仕事につとめるコムギ(メガネ、小さい)は美術系大学の講師であるキナリ(丸い目、でかい)とルームシェアすることに。
2人はテニミュ、イケメン俳優のおっかけという共通の趣味で知り合った仲。
ハロプロヲタの不動産屋さん、K-popアイドルおっかけのお隣さん、そして彼女らの家族との日常を描いたマンガ。


よかったとこ


百合じゃない、けどただよう百合感


コムギとキナリ、2人はルームシェアしてるけど百合じゃない。百合描写はないんだけどそこかしこに漂うそこはかとない「ゆる百合」感。

たとえば「コムギルームシェアするの!?男できたの!?」って突然泣き出すキナリ。
かとおもえば「キナリちゃん誰とルミネよしもと行くの!?」って変装して尾行までしちゃうコムギ。

女子特有の友情以上愛情未満な気持ちが心地よいバランスで描かれています。
ほのかに萌えます。

今みたら作者の方もおっかけ対象は男性、恋愛対象は女性だそうで、なるほど納得。



 

ヲタじゃない、全力で応援したいだけ


コムギとキナリはテニミュ&イケメン俳優ヲタ、不動産屋さんはハロプロヲタ、お隣さんはK-popアイドルヲタなんだけど、「ヲタ」ないし「オタク」って言葉はいっっさい出てこない(せいぜいおっかけ)。それにともなうステレオタイプなネガティブな概念も出てこない。

彼らに共通するのは「自分以外の誰かを自分よりも大切に思っている」っていう信仰に近い気持ちで、それはとっても美しいし、楽しそうだなあと思う。純粋に。

私もこんな風に自分以外の誰かを自分よりも大切に思いたかったし、それを分かち合える同性の友達がほしい人生であったよ。




画もシンプルオサレで読みやすいです。
コミックは無料でモアイサイトで読めるけど、単行本もほしくなっちゃったな。
元気になるので未読のかたはぜひぜひー。



2DK/竹内佐千子 - モーニング・アフタヌーン・イブニング合同Webコミックサイト モアイ


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