はい、泣きました。
時代もの×人情劇の組み合わせに弱いのよ。もう少し早く生まれてたらオレオレ詐欺の格好の餌食になってた自信があるね。
ポプラ社百年文庫「絆」
3篇とも、人と人との絆にフォーカスをあてた珠玉の作品。
書き手は海音寺潮五郎、コナン・ドイル、山本周五郎といずれも危なげなく読める大作家。
人を信じたい人、救いのある物語を読みたいときにおすすめです。
以下ざくっとあらすじと感想。
※ネタバレあります
善助と万助 海音寺潮五郎 1958年
あらすじ
「黒田節」で歌われている母里但馬友信(もりたじまとものぶ)、幼名善助。
そして善助の兄家老の栗山備後、幼名万助。
とにかく頑固一徹の変わり者、無法者な善助の良き導き役となってくれと主君の黒田如水から命じられる万助。
如水亡き後その息子の長政に仕えるも、善助=但馬の無法、頑固はいっこうに治らない。
主君長政直々の助言にも耳を貸さない但馬にとうとう万助=備後は業を煮やし、涙を流しながら但馬を打ちつける。
感想
この母里但馬友信って、史実でも相当頑固な変わり者として有名らしい。
戦は超強いんだけど「武士に二言はない」みたいな感じで自分の一度いったことは絶対曲げない、みたいな。
徒弟の熱い情を描いおり、人形劇とか歌舞伎でも楽しめそうなお話でした。
個人的には、但馬の「いやでござる!」連呼のかけあいのところが「大人で武士なのにめっちゃ大人げねえw」って笑った。
めんどくさいけど可愛らしい。
五十年後 コナン・ドイル 1890年
あらすじ
舞台はイギリス。ジョン・ハックスフォードは勤めているコルク工場のリストラに合い、代わりに、雇い主からカナダはモントリオールのコルク工場求人を紹介され、向かうことに。
恋人のメアリーと祖母へ「向こうで落ち着いたら必ず呼び寄せるから」と言って船旅でカナダへ向かったが、その後彼からの頼りはぷつんと途絶えてしまった。ジョンは悪銭宿の暴行にあい、記憶を失っていたのである。
それから50年、ジョン・ハーディとして勤勉に働き財をなした彼は、ふとしたきっかけで記憶がよみがえり、メアリーの待つイギリスへ急ぎ戻る。
それから50年、ジョン・ハーディとして勤勉に働き財をなした彼は、ふとしたきっかけで記憶がよみがえり、メアリーの待つイギリスへ急ぎ戻る。
しかしメアリーはすでに病に倒れ、目が見えなくなり、死の淵に立っていたーーー。
感想
シャーロック・ホームズ読んでたときも思ったけど、コナン・ドイルって独特の言い回しで最初なかなかすっと頭に入ってこない。海外文学になじみがないからかもしれないけど。
それでもストーリーが進むにつれて訪れたことのないイギリスの港町、鰊の匂い、メアリーとジョンの顔に刻まれた深い深い皺が手に取るように伝わってくるのがすごい。
メアリーがジョンの到来に気づかずに、死の淵に立ってなお「あの人が帰ってきたら入用でしょうからあのお金を渡してください、私は楽しく暮らしていましたとお伝えください」とジョンへの言伝を神父に頼むところは、ああ泣かせにきてるゥ!ってわかってても泣いちゃった。メアリーあんたええ女や。
蛇足ですがコナン・ドイルは開業医で、診療所のヒマ時間をもてあまして小説を書いていたそうです。
初めて知った。
山椿 山本周五郎 1948年
あらすじ
父の代からの作事奉行を継いだ28歳の梶井主馬(かじい しゅめ)は、18歳の須藤きぬという女を嫁として迎える。
しかしきぬは一向に主馬にこころもからだも開こうとはしない。とうとう自害までしようとするきぬに主馬は理由を問う。
きぬは、梶井への嫁入り前に榎本良三郎という男と恋に落ち、彼に操立てしていたのだというーー。
感想
これきぬが実は生きてて、主馬が榎本ときぬを引き合わせてめでたしだなと思ったら、そうは簡単にいかない描写でぬぐぐ上手い!でした。
コナン・ドイルの「五十年後」でも思ったけど、読者が大体のラストに気づいちゃっても、そこまでを引っ張ってひっぱって「ああ!」と感動させる力が必要なんですな。わかってても泣いちゃうもん。
ああ!
あと蛇足ですが作事奉行は江戸時代における幕府修繕の管理職。つまり主馬は公務員、官僚なんですな。
次は「恋」「星」「灯」を読む予定だよん。
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