2015年3月19日木曜日

「、じゃないほう」を描く、九井諒子「竜の学校は山の上」がおもしろい





卯野どす。
いまだなつきさんにご紹介いただいて詠んだところ大変おもしろかったので収録作品のあらすじまとめながら感想をちょいログ。
このボリュームと面白さでKindleで300円はいいんですかああ!?って思った。

こういう作家さんとの出逢いがあるとあーまだ世界って楽しんだなあと思います。


「帰郷」


村を守るため魔王征伐に出かけた勇者が帰郷した。魔王が死んだあとも下級魔物に畑や家畜を荒らされている村民たちは勇者への感謝を見せない。勇者は村民のひとりに「近いうち隣国との戦争が始まる。魔王という共通の敵がいたから…」と悲しい表情を見せる。


「魔王」


旅の吟遊詩人が一晩の宿を借りにある家を訪れ、子どもたちに夜伽話を聞かせる。魔女の呪いで魔物に変えられてしまった傲慢な王。王は隣国の王女をさらい、やがて彼女を愛するようになる。王女は彼の心に触れながらも父親や民を殺した魔物の王に心を許しきることができず、王はやがて訪れた勇者によって討伐されてしまう。
そんな吟遊詩人の話に、女主人は「王女がただの村娘であったなら少しは結末も違っていたのかしら」とつぶやくーー。


「魔王城問題」


勇者たちが魔王を征伐し魔王城は空になった。国主の命により魔王城とその一帯を人の住めるようにしようと住むことを決めた領主とその娘。
毒の沼からたちのぼる毒気で病状に伏せた娘と、お祓い箱にされアル中になった勇者が城の地下で見たものとはーーー。


「支配」


地球の進化の遅れを哀れんだ異星人(?)AとBがプレゼントしたのは「生き物製造機」。健全に動かすため周りを城壁で覆ったそれを、進化が進んだ人間たちはいつからか「魔王」と呼び、討伐の対象とみなした。
やがて勇者が魔王こと生き物製造機を破壊した様を見て、異星人Aは「ばかな連中たち」と罵るが、異星人Bは「確かにこの星は今やっと魔王の支配から脱したのだろう」という。


「代紺山の嫁探し」


貧相な山村の村長は、「この村を豊かにするべく村の男と女神さまを結婚させよう」と目論む。白羽の矢が立ったのは身寄りのない若者、権平。
村長の娘おみつは「村に利用されているだけだ」と権平を止める。
権平と村長一行が伺いを立てたのは、火の神、水の神、豊穣の神。
豊穣の神は娘のはなを嫁がせる約束をしたが、村の貧窮の原因が村人自身の神への不敬であることを知り激怒。
村を滅ぼそうと鬼の形相になる豊穣の神の前に現れたのはなんとーーー。


「現代神話」


もし世界に、半馬半人の「馬人」と「猿人」が混在していたらーー。

「進学天使」


普通の人間のほかに天使のような羽根をもつ「翼人」のいる世界。
翼人としての才能を生かすため高校に進学せずアメリカに留学するかもしれない、という翼人の女子同級生に、最初は日本に残ることを進める「俺」だがーー。


「竜の学校は山の上」


日本で唯一「竜学部」のある宇ノ宮大学。新入生のアズマは年齢不詳の部長カノハシについて竜の利用価値を探ることに。
カノハシ部長はアズマに「世の中には役に立つものとこれから役に立つかもしれないものがある」という。

「くず」


大学にもいかずパチスロと試薬試験バイトでくいつなぐ男、加藤。ある日紹介された割のいいバイトは古民家に1ヶ月他の人間と共同生活を送るというものだった。集められた男たちは加藤同様に無気力に生活する男たちだった。
共同生活2日目から、やがて男たちが1人消え、2人消えていく。



感想:「じゃ、ないほう」を描くのがうまい


どれも好きだけど「大紺山の嫁探し」「現代神話」「進学天使」が好きかな。
「勇者が魔王を征伐したその後」とか、「魔王亡き後の城の有用活用」とか、「進学天使」の「俺」の傷つき方、傷つけ方とか、ああこういう目線好きだなあ。
たしかに勇者って魔王有りきの存在だもんね。

あと馬人とか翼人とか竜とか、「すこし・不思議」な世界観を当たり前みたいにスーッって話を始めるのが上手い。かなり細かいところまで妄想…いや、設定練ってるんだろうな。こういう設定考えるの楽しいよね。



今話題のダンジョン飯も勢いで購入しましたので今晩読みます。
誰の本屋さんから買ったかはナイショ。でへへ。




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『ひきだしにテラリウム』特設ページ | Matogrosso

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