2015年3月19日木曜日

Kindle3月の月替りセールで買った5冊・気になる4冊

【買った本・読んだ本】



99円

これは以前に読んだ。
罪と罰長いってきくんですけど手塚治虫先生タッチで一回頭に概要入れといたら原作あたりやすいんじゃないかな、と思います。
 私みたいな古典ヘタレは。




300円
買って読んだ。同人作品もあるからこのお値段なんでしょうけどこのボリュームこのおもしろさでこのお値段はお得だと思います。




399円。読み途中。
ツァラトゥストラ原本も読んだ。思想家の本にしては薄くて表現も明朗で読みやすいんだよね。なんかちょっと弱ってるときのカンフル剤的読後感だなあといった印象が残ってる。

メタ理解本は読んだことなかったのでこの機会に読んでみようかな。こちら自体も読みやすいです。

余談だけどニーチェっていうとどうしてもワーグナーの奥さんに横恋慕して「月の女神のようだ!」ってラブレター送ったのが後世まで晒されてるとか、それが元でワーグナーがニーチェにブチ切れ絶縁したとか妹にめちゃくちゃ嫌われてて作品改変されたとか面白エピソードのほうに目がいってしまいます。



599円。
少子高齢化および嫁呼び問題で講釈たれる資料として。

















200円。読んだ。
ビッグ・ブラザー・イズ・ウォッチング・ユー。
マンガでこれだから原作は相当アレなんだろうな、という印象。

この手のマンガで〜系は「こんな感じの話らしいよ」という導入にはいいかもしれませんが今思ったけどじゃあそれって本のレビューブログでよくね?





【その他買ってないけど気になる本】




199円。
オサレ〜。

















99円。
一本木蛮先生はたしか日本原初のオタクコスプレ女子なんだよね。
私が物心ついた時から今まで描いてるってすげーな。




714円。
写真は光の操り方だなーとカメラ小僧の知人も言ってましたね。
一眼レフほしい。



 

50円。

これはもしかしてアクセスするとウイルス感染して個別の11人になってしまうというアレでは…?



その他Kindle月替りセール一覧はこちらから
Amazon.co.jp: Kindle月替わりセール: Kindleストア


▶近況
上記のほか、坂道のアポロン4巻以降、レイモン・クノー「文体練習」、川上弘美の句集「機嫌のいい犬」がほしいです。


「、じゃないほう」を描く、九井諒子「竜の学校は山の上」がおもしろい





卯野どす。
いまだなつきさんにご紹介いただいて詠んだところ大変おもしろかったので収録作品のあらすじまとめながら感想をちょいログ。
このボリュームと面白さでKindleで300円はいいんですかああ!?って思った。

こういう作家さんとの出逢いがあるとあーまだ世界って楽しんだなあと思います。


「帰郷」


村を守るため魔王征伐に出かけた勇者が帰郷した。魔王が死んだあとも下級魔物に畑や家畜を荒らされている村民たちは勇者への感謝を見せない。勇者は村民のひとりに「近いうち隣国との戦争が始まる。魔王という共通の敵がいたから…」と悲しい表情を見せる。


「魔王」


旅の吟遊詩人が一晩の宿を借りにある家を訪れ、子どもたちに夜伽話を聞かせる。魔女の呪いで魔物に変えられてしまった傲慢な王。王は隣国の王女をさらい、やがて彼女を愛するようになる。王女は彼の心に触れながらも父親や民を殺した魔物の王に心を許しきることができず、王はやがて訪れた勇者によって討伐されてしまう。
そんな吟遊詩人の話に、女主人は「王女がただの村娘であったなら少しは結末も違っていたのかしら」とつぶやくーー。


「魔王城問題」


勇者たちが魔王を征伐し魔王城は空になった。国主の命により魔王城とその一帯を人の住めるようにしようと住むことを決めた領主とその娘。
毒の沼からたちのぼる毒気で病状に伏せた娘と、お祓い箱にされアル中になった勇者が城の地下で見たものとはーーー。


「支配」


地球の進化の遅れを哀れんだ異星人(?)AとBがプレゼントしたのは「生き物製造機」。健全に動かすため周りを城壁で覆ったそれを、進化が進んだ人間たちはいつからか「魔王」と呼び、討伐の対象とみなした。
やがて勇者が魔王こと生き物製造機を破壊した様を見て、異星人Aは「ばかな連中たち」と罵るが、異星人Bは「確かにこの星は今やっと魔王の支配から脱したのだろう」という。


「代紺山の嫁探し」


貧相な山村の村長は、「この村を豊かにするべく村の男と女神さまを結婚させよう」と目論む。白羽の矢が立ったのは身寄りのない若者、権平。
村長の娘おみつは「村に利用されているだけだ」と権平を止める。
権平と村長一行が伺いを立てたのは、火の神、水の神、豊穣の神。
豊穣の神は娘のはなを嫁がせる約束をしたが、村の貧窮の原因が村人自身の神への不敬であることを知り激怒。
村を滅ぼそうと鬼の形相になる豊穣の神の前に現れたのはなんとーーー。


「現代神話」


もし世界に、半馬半人の「馬人」と「猿人」が混在していたらーー。

「進学天使」


普通の人間のほかに天使のような羽根をもつ「翼人」のいる世界。
翼人としての才能を生かすため高校に進学せずアメリカに留学するかもしれない、という翼人の女子同級生に、最初は日本に残ることを進める「俺」だがーー。


「竜の学校は山の上」


日本で唯一「竜学部」のある宇ノ宮大学。新入生のアズマは年齢不詳の部長カノハシについて竜の利用価値を探ることに。
カノハシ部長はアズマに「世の中には役に立つものとこれから役に立つかもしれないものがある」という。

「くず」


大学にもいかずパチスロと試薬試験バイトでくいつなぐ男、加藤。ある日紹介された割のいいバイトは古民家に1ヶ月他の人間と共同生活を送るというものだった。集められた男たちは加藤同様に無気力に生活する男たちだった。
共同生活2日目から、やがて男たちが1人消え、2人消えていく。



感想:「じゃ、ないほう」を描くのがうまい


どれも好きだけど「大紺山の嫁探し」「現代神話」「進学天使」が好きかな。
「勇者が魔王を征伐したその後」とか、「魔王亡き後の城の有用活用」とか、「進学天使」の「俺」の傷つき方、傷つけ方とか、ああこういう目線好きだなあ。
たしかに勇者って魔王有りきの存在だもんね。

あと馬人とか翼人とか竜とか、「すこし・不思議」な世界観を当たり前みたいにスーッって話を始めるのが上手い。かなり細かいところまで妄想…いや、設定練ってるんだろうな。こういう設定考えるの楽しいよね。



今話題のダンジョン飯も勢いで購入しましたので今晩読みます。
誰の本屋さんから買ったかはナイショ。でへへ。




2013年に第17回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞受賞したという「引出しにテラリウム」の一部がこちらで無料公開されています。

『ひきだしにテラリウム』特設ページ | Matogrosso

2015年3月9日月曜日

貴志祐介「クリムゾンの迷宮」いいとこ悪いとこ


「クリムゾンの迷宮」読み終わりました。貴志祐介は初体験。もう10年以上前の作品なんだな。おもしろかった!






私好みのエグさでしかもおもしろくて後半は久しぶりに頁をめくる手が止まらない(KIndleだけど)というトリップ体験をあじわいたいへん満足。

提灯レビューにならないようにいいところのほか、「あえていうなら」、「この伏線って何?」と既読の方に訊きたい部分をログしときます。


■あらすじ


主人公藤木は砂礫の上で目を覚ます。そこは地球上とは思えない、赤く枯れた荒野の大地だった。

藤木同様、なんらかの理由で社会からドロップアウトしたもの、脛に傷もつ者たちが集められ開催される「生きるか死ぬかのゼロサムゲーム」に知らぬ間に巻き込まれてしまった藤木。ヒントになるのはゲーム機と「火星の迷宮」というゲームブックだけ。

果たして藤木は「人ならぬもの」から逃げ、無事この「クリムゾンの迷宮」から生きて帰れるのか?


※以下のっけからネタバレありなので内容を知りたくないかたはそっ閉じしてね↓




■良かったとこ


エグい


物理的なエグさももちろん「極限状態でヒトはどう本性がむき出しになるか」というのがよく出ていたなと思います。
純文学ならもっとエグく重いけど、エンタメホラータッチだからそこまでマイクラにならないのもまた良し。


情報量がかなり多い


舞台はまるで火星のオーストラリアの荒野、「バングル・バングル」というところ。
サバイバルの知恵はじめ毒蛇、ドラッグ・カクテル、トラップ、果てはラストで明かされる藍の身体的な秘密まで作者の知識、情報の幅が広くかつ量がハンパない。

ぐぐったら作者の貴志祐介さん京大出身で小さいころからミステリ・SF大好きなんですね。納得。


ファンタジーのような世界は実現可能


ネタバレをしてしまえば、このゲームはどっかの富豪がスナッフ・ムービーを撮りたいがためにお膳立てした大掛かりな遊戯で、藤木らはそれに巻き込まれたってこと。

だから火星のような舞台も食屍鬼もゲームの部外者を排除するシステムも、ファンタジーじゃなくてきちんと現実的な裏付けがある。

逆をいえば、「荒唐無稽で非人間的なこの世界観はどこかのバカにその力と金があれば、人間の手で作れる」ってこと。全体を読み通して最後、それが一番こわかった。


エンタメミステリ・サバイバルサスペンスに徹している


表現に目新しさがあるわけでもなく純文学のように人の機微にフォーカスしてるわけでもない。
途中でハリウッド映画のように藍との濡れ場があったり、他の書評にもあったように「娯楽ムービーのメイキング」を書きながら、作者の貴志祐介もまた読者に娯楽を提供しているんだと思う。


だから途中「それは強引じゃね〜??」っていいたくなるような人間の行動や展開も大体飲み込めてしまう。

終盤「食われるのか!助かるのか!」ってドキドキしながら頁ぐんぐんめくっちゃったもん。



書くべきこと書かなくていいことを徹底している


作者すげーなと思ったのは、徹底して「読者がおもしろいと思うところ」だけにフォーカスして書き抜いているところ。

ゲームの参加者一人ひとりの設定はもちろん舞台の背景、拉致された方法まで細かく現実的にされてる。そのことが物語に信ぴょう性をもたせているんだけど、作品ではあくまで「藤木が鬼から逃げて生還すること」を丹念に描いている。

「これは書くべきか?台詞で説明すべきか?」って悩むところだと思うんだけど、ほんとに面白いとこ以外はバッサリやっちゃってるのがまあ匠の技ですね。





■あえていうなら


藤木博学すぎじゃね?


物語は藤木よりの三人称で進んでいくんだけど、証券会社勤務で過去にボーイスカウトの経験があるとしても藤木が博学かつ頭の回転がよすぎる。
藍ものちにゲームの運営側であることがわかっても頭が回り過ぎる。


藤木の行動にときどき整合性がない


そんな博学MAXの藤木だからこそ、時々とる行動に整合性を感じない。

たとえば藤木は物語後半、ゲーム上「重大なペナルティ対象」である高い山に登る行為を犯してしまうんだけど、追われるストレスからといってもそれまでの理知的な藤木の行動からの流れではどうしても「やらされてる駒感」を感じてしまうんだよね。なぜその行動に衝動的に走ったのかあまり共感、納得できない。

まあ多分それを丹念に描写しようとすると上下巻に分かれるボリュームになるんでしょうな…。


ゲームの背景についてちょっと説明ぎみ


後半は賞金500万円を手にした藤木が探偵を頼んでゲームの背景を探ろうとする。

そこで藤木はこれが壮大なスナッフ・ムービー製作であったことを知るのだけど、そのあたりは探偵と藤木の会話のやりとりでほとんど走り書き状態の説明。

このゲームの観覧を楽しんでいた奴らがどんな奴か、藍はどこに行ったのかを書くと馳星周とか大沢在昌っぽいブラックノワール探偵もので1冊できそうだなあ。


ゲームブックの作者の背景って何か関連してる?


ストーリー進行のヒントになるのが途中で藤木が拾う「ゲームブック」の存在。このブックを作った作者の背景や恋人まで細かく設定されていることを、読者は後半の探偵の台詞で知る。

これってストーリーに何か関連ある?作者の恋人が突如行方不明で失踪、その後うつ秒で執筆不可能に…って細かすぎて、なんかあるのか気になる。
恋人が藍?とも思ったけど、時間軸あわないし。


■総評


エンタメものとして最高


藤木の人物描写とか雑!ってとこはあるけど、逃げるか食われるかのハラハラエンタメ感は最高だった。
読みやすいのでエンタメミステリ、グロも可な方にはいいですね。


次はなんだか評判良さそうな「青の炎」か「新世界より」を読もうか、それから「悪の教典」にしようか迷い中。












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