弱虫ペダルは少年チャンピオンで連載されている「高校生ロードレース部」の群像を描くマンガ。
はっきりいってマンガとしてのコスパは非常に悪く、1巻に10分かからず読めてしまう。
ただそれはのめりこむように読ませてしまう「蠱惑」と「スピード感」がそこに描かれているから…!
という訳ではからずも2日で既刊35巻まで読破してしまったので、読みどころとあえてツッコミたい部分をザクっと残しておきます。
ざくっとあらすじ
千葉県立総北高等学校に入学した主人公・小野田坂道(おのだ さかみち)。千葉から秋葉原の往復90kmを夏休み中は毎日ママチャリで通うほどのアニメオタク。同じく1年で自転車部に入部したロードレースエリート・今泉俊輔(いまいずみしゅんすけ)にそのロードレーサー、特にクライマーとしての才能を見出され、坂道は自転車部に入ることに。
個性豊かな先輩・同級生たちと自転車の魅力にとりつかれ、その才能を開花させていく。
■読みどころ
・すべてのキャラがおコメのように立っている!
このマンガの主人公はいちおうメガネちびっこの小野田坂道くんですが、「自転車」という競技を通して自転車に魅入られた男たち全員にスポットライトがあたっています。
小野田くんの師匠となる3年の先輩「イレギュラー・クライマー」巻島から始まり、脇を固めるキャラクターひとりひとりの背景にきっちり自転車に魅入られるきっかけになったコンプレックスや挫折、苦悩の物語があって、「だから俺は自転車に魅入られてるんだ!」という説得力があって、登場人物の人数分ぶんだけ物語のおもしろさが増している。
ピンピンですよ!羽釜炊きのおコメのようにひとつぶひとつぶがピンピン立ってますよ!
むしろ脇キャラが濃すぎて小野田くんの背景が薄く感じるわ。
・1つのマンガに2つの作品を見てるような錯覚
とくに主人公の小野田坂道のいる総北のってパートと、
物語中盤から出てくる第一ヴィラン・キモーすj…御堂筋くんのパートでまったく別の作品。
例えるなら総北は「努力!友情!強調!」で、
御堂筋くんとこが「孤独!業!存在証明!」。
でもこれどっちも「自転車」ていう特殊なスポーツの側面をよく表してます。
自転車競技は1校から6人出場できて、エースやスプリンター、クライマー、アシストなんてそれぞれに特色と役割があり、風よけなど協力しながら走るスポーツ。
でも基本的に自転車を漕ぐのはじぶんひとりで、優勝できるのは1位でゴールに入った人間ただひとり。
「勝つというのは独り」
「勝ちたいという業」
「勝ちでしかできない己の存在証明」
独りになっても他人を出し抜いても勝ちたい、という人間の業スポーツの業を御堂筋くんが化身としてよく表してくれてると思います。
光と影ではなく、この2つのあざないこそが自転車の蠱惑だと思います。
この御堂筋がいなかったら弱ペダの説得力と面白さちょうど半減だったな。
ここらへんスポーツ、とくにマラソンや野球のピッチャーなんか経験のある人はちょっとわかるんじゃないかな。
でもやっぱりキモい「人型兵器」キモー筋(エヴァに似てる)。
・リアル感と疾走感あるレース描写×マンガならではのAR表現
作者の渡辺先生がうまいな読ませるなーと思うのは、このあたり。
→最高時速70−80km/h出るというスポーツ「自転車」のスピード感、乗ってる側の体感を超リアルに描写してる
ほとんどがタテスジの効果線で「おおおおおおおおお」ってチャリンコこいでるコマなんですけど、自分も走ってる気になってどんどんページめくっちゃうんですよね。
とまんない。
これが35巻あっという間に読んじゃう理由。
→マンガならではのありえない誇張、AR表現
総北の3年スプリンター・田所が「さーーんそーー!!」っていいながら肺活量8500ccの肺に空気吸い込むとバウンて風船みたいに膨らむとか、
総北のライバル・箱根学園のクライマーで小野田くんのライバルになりそうなマナミくんは山登るときぶわさって翼が生えちゃうとか、
そういうマンガならではの「ありえない」表現が笑える一歩手前でおもしろいです。
ちゃんと自転車描写はおさえつつマンガとしてエンタメしててすげえ。
■あえてのツッコミ
・主人公が挫折知らずに勝ちすぎ
・ゴール前の競り合いでひっぱる→ワンパタ
自転車はほかのスポーツと比べ特別な競技だからって、まったくの初心者の小野田くんがいきなり1年でインハイ行っちゃったりそこで競り合って競り勝って優勝しちゃったり、「いくら少年マンガだからってないわー、そりゃないわー、」と正直思いましたね。
他のキャラはわりと丹念に描写してるのに小野田くんだけ挫折も苦悩もなくていきなり強くなってる孫悟空状態なのであまり感情移入できない。
あと「なにい!まさか奥の手を隠し持っていたとは!」
「なにい!テーピングで力を封じていただと!」
「ゴール前残り100m!どうするどうなる!!」のパターンがちょっと多いです。
そういう「さえない主人公が実はサイヤ人でBLEACH的に各キャラに異名と必殺技があって戦闘力がインフラ的にあがる」けど自転車描写がはんぱない娯楽マンガだと思って読んでもらえば間違いないですね!
kindleでもたのしめm
36巻は10月発売だ!
合わせて読みたい
鬼頭莫宏好きなので読みたいな。
鬼頭作品には珍しく(w)グロ、ブラクラなしのチャリまんが。
40から始めた作者のローロレースチャリ体験記。
体験にまさる快感はない。はい。
これも観たい。
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