2014年11月19日水曜日

吉行淳之介「曲がった背中」がせつない−百年文庫「夜」より

卯野です。

ポプラ社 百年文庫なるものを発見。
漢字一文字をテーマに文豪たちの短編を1冊の本に再編集した、アンソロジー集。
「花」とか「庭」とかいろいろあるなかで、まずは自分の好きな漢字&テーマかつ興味ある作家さんの作品があるものを選んでみました。

これ。





カポーティ「夜の樹」1945年

カポーティのデビュー短編「ミリアム」と同年、1945年の作品。
3年後の48年に初長編「遠い声、遠い部屋」でヒットを飛ばします。
「ティファニーで朝食を」は54年なのね。

あらすじ
叔父の葬儀を終えて大学のある町へ汽車で帰る女性「ケイ」が主人公。
汽車の中で彼女が乗り合わせた見世物芸人とのやりとり。

初カポーティですが、美意識めっちゃ高い人だったのかなという印象。
冒頭の夜の駅ホームで汽車をまつ「ケイ」とその情景の描写はロマンティックで、服の素材にいたるまで繊細で美しい。
対照的に、汽車の中で乗り合うことになる見世物芸人の短躯症の女と唖者の男性の、現実にあふれる労苦と卑俗感を気持ち悪く書いてる。



吉行淳之介「曲がった背中」1966年

1954年芥川賞受賞作「驟雨」後の短編作品。

あらすじ
いきつけの飲み屋で背中を丸めて孤独に飲む男。
ある日主人公は、酔った勢いで彼に「ヘミングウェイの殺人者の背中のようだ」と声をかける。
男は主人公に、自分が愛する女に犯したある出来事を打ち明ける。

流麗で読みやすいけど表現技術に酔った感じがない、空気感も感じる好きな文体。
男は罪償いなのか、思いあがりなのか、何もかもわからないまま女と暮らしているという。
そこらへんがリアルだった。現実には定義しがたいことが、自分の心のなかでさえたくさんある。わからないものをわからないまま書いてる物語をもっと読みたいな。
せつなくて大変好きでした。




悲しいホルン吹きたち アンダスン 1923年

すまん!読みませんでした。


ーー

次は「絆」を読もうかと。









2014年11月2日日曜日

さいきん読んだマンガ感想だよー東京喰種、僕だけがいない街、亜人

おいっすー。
今さらながら東京喰種(1~12巻)、僕だけがいない街(1~4巻)、亜人(1~4巻)の3作品を続けて読みました。
以下ざくっとあらすじ、感想。



東京喰種(1~12巻)




あらすじ:
人間を食うことで生きる「喰種=グール」の臓器を移植され、自らも「半喰種」となってしまった主人公・金木。
敵対する人間と喰種とのはざまで揺れ動きながら、金木は両者の共存の道をさぐる。

感想:
戦争とか紛争、マジョリティとマイノリティの話だなーと感じました。
喰種には喰種(マイノリティ)の世界と社会と正義がある。
それを最初に脅かし、十把一絡げに殲滅せしめんとするのは誰?
喰種の生態、赫子(かぐね)とか赫胞(せきほう)とか設定が非常に緻密で壮大な世界観。
善と悪の2つでわけられないものがある。

これ小説版でもおもしろいだろーな、ってか有馬貴将の武勇伝とかマンガだけじゃ描ききれないだろうなって思ったら小説版も出てるんですね。
21巻で第一部完になってる。
見どころは8巻あたりからのヤモリからの拷問によって第二形態()になった金木くん。ツンデレヒロイントーカちゃんの弟へ、おしおきとしてきっちり103本の骨を粉砕するシーンでは「あ、絶対こういう頭のいい努力家の文学青年怒らせんとこ(^v^)」と思いました。蝶形骨!!




僕だけがいない街(1~4巻)




  あらすじ:
人が死ぬ場面に違和感を感じ、その一瞬に時間を逆行させることができる漫画家志望の主人公・悟(さとる)。彼は自分の能力を「再上映(リバイバル)」を名づけている。彼には子供時代に同級生の女の子をたすけられなかったという心残りがあった。
ある日アパートに帰ると悟の母が何者かに刺殺されており、容疑をかけられた悟は警察に追われることになるーー。

感想:
4巻までの段階では、作者が何を一番に言いたいのかあんまよく分からない。
たぶん一番は「言葉と行動が未来の自分を決める」ってこと、かな?
プロット半分、アドリブ半分と作者本人もあとがきで描いてるので、作者自身楽しみながらこれから伏線がひとつひとつ見えて回収されていくのかな。
犯人は先生!(予想)
あと荒木飛呂彦先生のチーフアシで帯書いてもらったことでも賑わっていたけど、荒木先生のような濃ゆい作風の師匠のもとで学びながらも、自分独自の世界観と作風がしっかりあるのはスゲー!!と思いました。


亜人(1~4巻)




  あらすじ:
交通事故で死亡して、自分が人間を模した死なない生き物、「亜人」であることに気づいた医者志望の高校生。
報奨金ほしさの民間人や政府に狙われる中、主人公は同じく亜人の「佐藤」や「田中」と出会いながら気づいていく。
「亜人」の力が子供の頃から自分のそばにあったこと、自分自身「他者との関わりかた」にどこか欠陥があることにーー。


感想:
世界観やテーマは「東京喰種」と少し似ている感じですが、こちらはもうちょい設定がシンプルで、主人公の内的心情にも謎が多いかな。
痛みの描写もエグい。
亜人になる前から「他者に興味関心がない」共感能力がきわめて乏しいことを他人に悟られずに生きていけている主人公。
なぜ共感能力が欠如しているのか、今後それがどのように変わっていくのかも興味あり。
「どんな傷をおっても死ねばリセットされる」とはいえ痛覚はちゃんとある。だから他の大人の亜人でも自死するのを躊躇うんだけど、それを自分も他人も躊躇なく合理的に生き死にの天秤にかけられるのはやっぱりどっかヘンだよおっかさん。

あと絵柄や構図や話のつくりが「ARMS」「スプリガン」の皆川亮二先生にソックリだと感じました。
アシさんだったのかなと思って桜井画門先生のwikiみたら、影響は受けてるけどアシ経験はないみたい。三部けい先生とはまた別ですごい。



いずれも以下続巻。
ハッピーな漫画もお口直しに借りときゃよかったね…。






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